笹団子の降る夜

読んだ漫画の感想を、自分勝手に書きます。

愛おしくってごめんね

外を見ると、まさに雪やこんこと言うように静かに雪が降り続いていた。

昨日は風もあり、まるで"デイアフタートゥモロー"みたいな暴風雪になってしまっていたが、今日は風がなく、どちらかと言うと"冬のソナタ"が似合うような美しい雪が降り積もっている。僕は実家の部屋で半纏を着つつ、暖房を付けた部屋でぬくとまりながら、綺麗な冬の外の様子を眺めていた。

 

新しくPCを購入した。

もう前のPCも6年ほど使ったので、流石にPC自体がフリーズしたり、動きが悪くなってきた。フォロワーに相談して、もっと良いものというか、ちゃんとしたやつを買った。おかげで全て爆速である。本当にBIG KANSHAだ。

今は前のPCから、必要なデータを移そうと作業をしているところだ。

「ん・・・?何だこれ?」

その途中、気になるデータを見つけた。Musicフォルダ内に「ハロプロ」と名前のついたフォルダがあった。

 

ハロプロとは、HELLO! PROJECTの略称である。モーニング娘。'22や、ANGERME、Juice=Juice、つばきファクトリー、BEYOOOOONDSなど、様々なアイドルグループを有している。f:id:sasadangokko:20220107001350j:image

モーニング娘。"22

 

僕が大好きな職場の元先輩は大のハロプロ好きだった。これはその人が半ば強引に押し付けてきたUSBに入っていた音楽ファイルで、ありがたく拝借したものだった。

職場の元先輩は、それはもう凛として綺麗で、まあもはやそれはどうでも良いくらい魅力的な人だった。尊敬していた。と同時に「エレブーの進化わたしまだ覚えてるよ!エレキッドでしょ?凄くない!?わたしの記憶力!!」と、間違った内容で自分を褒めるユーモアのある人物でもあった(正解はエレキブル)。

 

(その先輩については詳しくはこちらのブログにて。長くて申し訳ない。。)

https://sasadangokko.hatenablog.com/entry/2021/07/28/195601

 

ちなみに先輩はモー娘。の中で言えば、去年の12月13日に卒業した佐藤優樹さん、いわゆる"まーちゃん"推しだったし、さらに言えばルパンレンジャーもやっていた卒業生の工藤遥さんの推しであり、何なら同期仲良しのこの2人のカップリング"まーどぅー"推しであった。まーちゃんは、ライブ映像を見る時「今の子誰?」と誰もが気になってしまうくらい、それはもうカッコいい存在だ。僕もそう思ってしまう。見たら一発でわかるくらいカッコいいのである。

モーニング娘。'19『I surrender 愛されど愛』(Morning Musume。'19[I surrender. It’s only love but it is love.]) (MV) - YouTube

一番キマッてる感があるのが佐藤優樹さんである。

 

また僕はと言えば、妹もハロプロが好きだったので、その流れで先輩に話を持ちかけたところ、熱心な勧誘にあてられ、無事先程のUSBを押し付けられた。「絶対に聴けよ・・・!!!」と言う先輩のオーラはかつて見た事がない程に禍々しく、これは聴かないと殺されるなと思った。

ドルオタのなかでもハロプロに男性は少ないらしいが、僕もまあそこそこ知識はあるし好きな歌や推しもいるぐらいのファンにはなれた。ちなみに僕はかえでぃー(加賀楓さん)推しである。f:id:sasadangokko:20220112144435j:image

かえでぃーこと、加賀楓さん

ていうか、かえでぃーが書いてるブログのタイトルと中身が違い過ぎるのが面白すぎる。「わたしのSwitchどこいった〜」ってタイトルで何故Switchに一切触れないんだろう。触れてくれよ。

カレーパンは美味しい。 加賀楓 | モーニング娘。’22 13期・14期オフィシャルブログ Powered by Ameba

リンクは「カレーパンはおいしい」というタイトルで、カレーパンのカの字も出ないかえでぃー(加賀楓さん)のブログ。

 

妹はハロプロで言うとANGERMEやJuice=Juiceのファンなので、推しは段原瑠々さんらしい。モー娘。では森戸知沙希さんだ。

 

僕は懐かしいなぁ・・・と思いながら、ハロプロのファイルを開く。今はなき"こぶしファクトリー"や、"カントリーガールズ"等も含めて、ちゃんとファイルがアーティスト毎に分けられている。なんて親切なんだ。

と思ったが・・・おや?と、少し違和感を感じる部分があった。

1曲だけ、どのファイルにも入らず外に飛び出ている。アーティスト毎に分けられたファイルが並ぶその下に一つだけ音楽ファイルが並んでいた。

カントリーガールズの「愛おしくってごめんね」だった。

どうしてこの1曲だけ・・・?と今更疑問に感じた。何せ"カントリーガールズ"のファイルはちゃんとあるのである。分類的にはそのファイルに入っているべきなのだ。

これはたまたまなのか、故意になのか、それとも失敗してなのか・・・。

一応その曲を聴いてみた。既に聴き馴染みのある歌だ、改めて歌詞を聴いて、何となく分かってしまった事がある。

多分、先輩は故意的にこの歌を別に置いた。

 

前述のブログでも書いたが、僕は先輩から助けられた事がある。仕事で大変な失敗をした時だ。当時は全然仲良くもなく、こんな先輩と僕が話せるとは思えんなぁ〜と思っていたのだが、先輩は仲の悪い同期の人にわざわざ僕の連絡先を聞き、LINEで励ましてくれたのだ。

この後、仲良くなった時に「何であの時、あそこまでして励ましてくれたんですか?」と聞いた。先輩はうーん…とちょっと考えるような仕草を見せた後、ふふっといたずらっぽく笑いながら「教えな〜〜い」とか言ってきた。当時は普通に「何なんだ、こいつ」とか思った。

このLINEの一件は、先輩のこと偏見で見てたなぁと、凄く反省し、先輩とちゃんと話すようになった出来事だった。

ハロプロのUSBを押し付けられた時はもうだいぶ仲が良く、一緒に遊びに行ったりするくらいにはなっていた。誘って新潟から山形にまでひたすらメロン食いに行ったりした(後輩も一緒だったけど)。

 

とりあえずは、一つだけ不思議と外れていた音楽ファイル、カントリーガールズの"愛おしくってごめんね"の歌詞をご覧頂こう。

 

君のこと好きになってから
自分じゃないみたい・・・
うまくいえなくて、ごめんね


「今なにをしているの?」
メールは返さないよ
返事よりも 会えない日を数えてほしい

 

昨日借りて観た映画
昨日食べたものとか好きな音楽
全部教えてはあげない

 

女の子の秘密を
明かさないのが女の子
嘘をついてはいないの

それが、運命よ

 

ごめんね (私のこと)
もっと悩んで (素直じゃないね)
知りたくなるように

カワいくないやり方だけれど

 

ごめんね (不器用なとこ)
中途半端も (魅力のうちって)
愛おしくて忘れられないでしょ


ゆるしてよ 愛ゆえに

ごめんなさいね

 

まあぶっちゃけ・・・ともすれば"性格の悪りー女"と思われてしまうかもしれないが、この歌詞の女の子は何というか、完全に先輩だった。

先輩のこのめんどくささは、多分仲良くなって受け入れられるようになってからでないと、あんまり印象が良くないように思える。

ひとつひとつ紐解いてみよう。

 

君のこと好きになってから
自分じゃないみたい・・・
うまくいえなくて、ごめんね

この辺りは正直・・・僕の事が好きだったとはあまり思えないので、省略させてもらう。ただ先輩は素直では無かったのは確実だった。

 

「今なにをしているの?」
メールは返さないよ
返事よりも 会えない日を数えてほしい

この辺りに関しては、紛れもなく先輩そのものである。先輩とのLINEは大体先輩起点で始まった。「煎餅の自販機初めて見た!買っちゃった!!」と写真付きで送られてきた。僕のLINEのメッセージ欄はチラシの裏だと思われていた可能性がある。

かといって、僕も先輩にLINEをしなかった訳では無い。先輩にLINEしても、全然返してくれないのである。既読スルーは当たり前みたいな人で、翌日に普通に返してきたりする。こっちはその間、何かヤべー内容送っちまったのかと不安になる。やきもきさせる天才だと思った。

 

昨日借りて観た映画
昨日食べたものとか好きな音楽
全部教えてはあげない

 

女の子の秘密を
明かさないのが女の子
嘘をついてはいないの

それが、運命よ

この辺りも完全に先輩である。ていうか普通に「昨日映画見た!」と言ってきたのに、何見たんですか?と聞いたら「教えない!」とか言われるのである。それは教えてくれたっていいだろ。

ただ、先輩の好きな食べ物は一部覚えている。チョコミント味のお菓子と、辛いものと、東南アジア系の料理だ。パクチーとかも好きだ。

一度先輩が職場で落ち込んでいた時に、かける言葉が見つからず、コンビニで「カントリーマアムチョコミント味(夏季限定)」を買ってきて、何も言わずに渡した事があった。背中に「ありがとう」と言われたので、今回だけですよ・・・と照れ隠しでフリーザみたいな話し方をした。先輩は相当嬉しかったらしく、仲の良い上司やほかの先輩とかに話していた。何だそれ。僕に言えよ。

 

ごめんね (私のこと)
もっと悩んで (素直じゃないね)
知りたくなるように

カワいくないやり方だけれど

ある夏の日の夕方だった。ポケモンGOのサービスが始まった頃に、先輩と2人で地元を歩いていたら跨線橋に差し掛かった。

「ねぇ、ちょっと夕日を眺めようよ」

わたし何言ってんだろ、と笑いながら僕にそう提案してきた。僕はいいっすねえと言いながら、何でもねぇ跨線橋の上で2人で柵に腕を乗せつつ、沈むのが遅い夕日を眺めた。

「先輩って・・・何で僕なんかとその、仲良くしてくれるんですか?」

「え〜〜考えたことも無い笑 考えないでしょ」

「まあ確かに」

「別に居心地いい人と一緒にいるだけだよ。」

そんな会話をした。僕は居心地がいいらしかった。

先輩は、前に「綺麗とか可愛いとか言われるのが好きじゃない」なんて言っていた。そんな事ってあるのか・・・?と思った。

とはいえべらぼうに綺麗で、めちゃくちゃモテると自分で言っちゃうくらいであり、そして才色兼備と本当に完璧だった。

しかし、「顔がいいから調子乗ってる」等、「顔がいいから」を頭にわざわざつけて叩かれる事が多くあったようだ。嫉妬なのだろうか。

いい事もあったが、反面悪いことも沢山あったのだろうと思う。本当は色々と抱えてそうだったけれど、全然教えてはくれなかった。

 

ごめんね (不器用なとこ)
中途半端も (魅力のうちって)
愛おしくて忘れられないでしょ

「最初、僕は先輩みたいな人と仲良くなれるなんて思いませんでしたよ」

「は〜?酷くない??」

「いや違いますよ!」

「違うくない!!」

「違いますって!笑」

自分の言葉が足りなすぎて、先輩と「これは違います!」「違うくない!」と口論になることはよくあった。

先輩はふふっと微笑みながら、前にまた歩き出そうとしている。跨線橋の途中、少し前を歩く先輩の背中について行くように歩きながら僕は言った。

「先輩はもう高嶺の花って感じで、全てが完璧すぎて・・・でも何か、話すうちに段々僕と同じような人間なのかなって、思えてきて、僕はそれが何だか凄く、嬉しかった・・・です」

照れくさくて途中から何が言いたいのか分からなくなってしまったが、多分こんな事を言った。前を歩く先輩は振り返らずにそっかぁ〜なんて言っていた。

跨線橋の下り坂も終わり、歩道に差し掛かった時に先輩はようやく振り向いた。建物の隙間から差し込んだ夕日のせいなのか分からないが、顔が少し赤らんでいるように見えた。

 

「ちょろいんだぞ、わたしなんて」

 

僕の目をまっすぐ見ながらこう言った先輩は、少しふっと笑みを浮かべつつ、ふいっと前を向いて歩き出してしまった。

その光景のあまりの美しさに、僕はぼーっとしてしまい、立ち尽くしてしまった。

先輩がまた振り返って、足踏みしながら「ねえ!早く行くよ!」と怒っている。それを見てハッとし、僕も歩き出した。

「今の光景が美しすぎて・・・」

素直にそう言った。

「心がこもってないな〜」

「写真に撮っておきたかった・・・」

「あらそう」

先輩はもう、今のは何でもないかのようだった。

「写真は、写真の美しさに留まっちゃうでしょ。写真に残ってない事の方が、記憶の中でどんどん美化されて、良い思い出になるもんじゃない?」

さっきの「ちょろいんだぞ」がどういう意味だったのかは、やっぱり全然教えてくれなかった。

 

今、ここでPCのデータを移行している僕は、あの時の言葉や美しくなった記憶を思い出した。そして改めて同意する。愛おしくて忘れられない思い出であると。 

ゆるしてよ 愛ゆえに

ごめんなさいね

 


先輩は、周りの人に聞く感じだと友達がいなかった。

予想外だった。本人も「なんか嫌われたりしちゃってさ」と俯きながら言っていた。

先輩の同期の男性からも「お前あの人と仲良かったの!?よく仲良くなれたな〜・・・」とか感心される程だった。何かあんまり心を開かないらしかった。

顔がいいだけで勝手に調子乗ってるとか言われるのだから、人を信用するのにも時間がかかるのかもしれない。何だかんだ僕も話せるようになるまで一年以上はかかったのだ。

でも、話してみると本当に人間臭くて、「いや友達いないから・・・」という理由で僕を誘ってくる、見た目や普段の完璧すぎる印象とはうってかわって、不完全な女性がいた。

しかし、僕としては先輩の尊敬すべきところがそこにあった。先輩と僕は、年齢的な上下関係はあったが、人としては対等だった。

僕が先輩に悩みを相談する、頼る。これは普通の事であるが、先輩も僕に悩みを相談したり、頼ったりしてくれた。片方が一方的に悩みを打ち明けたり頼ったりする関係より、互いに悩みを打ち明け合い、頼り合う関係は、確かに居心地の良さを感じた。

先輩に「いつか僕も認められたいな〜」という発言をしたら怒られた事がある。

「認めるとか認めないとか、考えた事なんて一度もない!先輩後輩だけど、別にわたしは偉くなんかない」

そんな事を言っていた。今ではとてもよくわかる。

憧れの人には認められたいものだけれど、認められようと行動する事は、本来の目的とズレてしまうという難しさがある。

人をちゃんと理解し、且つ人に自分をちゃんと理解してもらう事こそが、どんな人と関わるにしても大切であると思う。

僕は先輩を、女性である以上に、人として尊敬していた。

 

雪やこんこどころか、雪はごうごうと降り続けている。外は辺り一面、足跡も着いていない白くて綺麗な世界が広がっていた。

もう疎遠になった先輩の事を思い出すと、今でも楽しい気持ちになるし、これからの自分もやっていけそうな気持ちになる。

先輩の女性である部分に惹かれていったのは、明らかにこのハロプロの楽曲を聴いた後だ。いじらしい先輩の感じが、物凄く可愛らしく感じてしまった。

加えて人としても尊敬していて、友達として一緒にいても楽しく、しかも頼り合うことが出来る最高の人だった。

だからこそ、今でも全然忘れられなくなっている。

 

しかし、過去は過去だ。今大切にすべきなのは、今の人間関係、そしてこれからの人間関係である。

目に焼き付いた美しい思い出は、胸のはじっこで、いつまでも大切にしていよう。

これからの自分が、あの先輩とはまたちょっと違うような、尊敬できる人に出会えたらとても嬉しく思う。

・・・そう言えば、先輩がこの「愛おしくってごめんね」だけを外していたのって、どういう意味なんだろう。たまたまだろうか、意図したものなのだろうか。

意図したものであるとしたら、歌詞の感じからすると・・・

いや、やっぱり考えるのはやめよう。先輩のことをある程度理解した今、考えても無駄である事がわかる。

きっと理由を聞いても、教えてはくれないのだから。

 

 

ここまで話を引っ張っておいて、今更何をと思うかもしれない。この稚拙な文章のまとまりとして、全くもって相応しいとは言い難い。しかし敢えて聴いてもらおう。いきなり×を出されるももちに驚くかもしれないが、これこそが僕の好きな先輩そのもの、「愛おしくってごめんね」である。

 

 

カントリー・ガールズ『愛おしくってごめんね』(Country Girls [I’m sorry for being so adorable])(Promotion Edit) - YouTube